働き方

介護職のシフト不公平はなぜ起きる?現場でできる対策と働き方のコツ

介護の現場では、職員が協力し合いながら日々の業務にあたっています。しかし、シフトが「不公平」だと感じる場面は少なくありません。

「自分ばかり夜勤が多い」「連休がまったく取れない」「希望休が通らない」といった不満は、身体的な疲労だけでなく、心のストレスにもつながります。

また、そうした不満が積み重なると、人間関係の悪化や離職など、職場全体の問題にも発展しかねません。

この記事では、介護職におけるシフトの不公平がなぜ起こるのか、具体的な事例や原因、対処法までを分かりやすく解説します。

今の職場で働き続けるための工夫から、よりよい職場環境を探すためのヒントまで、実際の現場に役立つ情報をお届けします。

シフトが辛い、きつい、働き方に不満がある、といった介護職員の方は、ぜひ最後までご覧いただき参考にしてみてください。

介護職のシフトにおける不公平とは?

夜勤シフトで働く介護職

介護職として働くなかで、

「自分のシフトだけきつい」

「なぜこんなに夜勤ばかり?」

疑問や不満を感じたことはないでしょうか。

とくに人手不足が常態化している介護現場では、勤務の偏りや希望休の通りにくさといったシフトに関する不公平が起こりやすく、日常的なストレスの原因になります。

まず最初に、介護職員が実際に直面しやすい“シフトの不公平さ”を整理してみましょう。

あなたが不公平に感じているシフトもいずれかに該当するのではないでしょうか。

夜勤回数の偏り

「自分だけ夜勤の回数が多すぎる」と感じる職員は少なくありません。

夜勤は生活リズムを大きく崩すうえ、体力的・精神的にも負担が大きい勤務です。

しかし、夜勤可能な職員が限られていたり、資格保有者に業務が集中していたりすると、月に何度も夜勤を組まれるケースが見られます。

夜勤明けの休息が取れないまま日勤に入るようなシフトもあり、「他の人よりも過酷な勤務をさせられているのでは」と不公平感を抱くきっかけになります。

日勤の連続勤務

早番・遅番などの日勤が連続して続くシフトも、身体への負担が大きく、不満につながりやすいです。

特に、遅番から翌日の早番に続く“連続勤務”の組み方は、十分な休息が取れないまま業務に就くことになり、

「睡眠時間が確保できない」

「疲れがまったく取れない」

といった声が聞かれることになります。

自分の勤務表と他のスタッフの勤務表を見比べたときに、「なぜ自分だけこんなに連続勤務でシフトが詰め込まれているのか…」と感じる職員もいるでしょう。

希望休が通らない、連休が取れない

希望休が通りにくかったり、まとまった連休が取りづらかったりするのも、シフトに対する強い不満となります。

家族行事や通院など、どうしても外せない予定があるから希望を出したにもかかわらず、

「休みがもらえなかった」

「他の人の希望が通っていたのに」

といった状況に置かれると、仕事へのモチベーションにも影響が出かねません。

「希望休は一応出せるけど、実際に反映されるかは人による」といった空気がある職場では、納得感のあるシフト運用とは言えず、不公平感が根強く残ります。

シフト作成のルールや基準が不明確

「どうやってこのシフトが決まったのか分からない」

「相談もなく勤務が決められている」

といった声も、現場ではしばしば耳にします。

シフト作成のルールが曖昧だったり、職員間で共有されていなかったりすると、「結局、どんな基準で決めているの?」と不信感を抱く原因になります。

公平なシフトを組むには、明文化された方針や手順が必要ですが、それがないまま勤務が割り振られると、職員同士の間に温度差や不満が生まれやすくなります。

シフト作成者に有利なシフトになっている

「シフト表を見ると、いつも同じ人だけうまく休みを取っている」

「作成者自身が楽なポジションに入っている」

と感じることはないでしょうか。

こうした“えこひいき”や“内輪優遇”があると、他の職員は「シフトが不公正だ」「上司に気に入られているかどうかで決まっている」と感じてしまいます。

中には、パワハラに近い力関係が影響して、発言しづらい空気が生まれているケースもあります。

このような状態が続けば、職員の信頼関係やチームワークにも深刻な影響を与えることになりかねません。

介護現場でシフトの不公平が生じる原因

介護職の希望休が通らない時の対処

シフトに不公平を感じる場面には、必ずしも意図的な不当性があるとは限りません。

多くの場合、その背後には人手不足やスキルの偏り、調整力の限界といった“介護現場ならではの事情”が隠れています。

ここでは、現場で不公平なシフトが生まれてしまう主な原因を整理していきます。

人手不足、特定の資格・スキル保有者の偏り

介護業界では慢性的な人材不足が続いており、その影響はシフト作成にも表れています。

限られた人数で24時間365日体制の業務をまわすには、誰かが無理をしなければならない状況が起きやすくなります。

とくに、

「夜勤ができる人」

「リーダー業務が可能な人」

「介護福祉士などの資格を持っている人」

など、特定のスキルや条件を満たす職員にばかり負担が集中することも少なくありません。

「結局、夜勤は毎回同じ人」「ベテランに頼りすぎ」といった偏りが、結果としてシフトの不公平を生む原因になります。

シフト作成者のスキル不足

シフトを作る役割を担うのは、ユニットリーダーやサブリーダーなどの中堅職員であることが多いですが、必ずしも「適正なシフト作成スキル」があるとは限りません。

公平性・業務バランス・希望休調整・連勤回避など、複数の要素を同時に管理するのは非常に難しく、経験が浅い作成者にとってはシフト作成は大きなプレッシャーです。

「つい自分の都合を優先してしまう」「公平に組んだつもりでも偏りが出る」といったケースも中にはあり、シフト表が完成してから他職員の不満が噴出することもあります。

スキル不足が悪意ではなくても、結果として不公平なシフトになっている場合があります。

職員間のコミュニケーション不足

シフトに関する希望や事情が十分に伝えられていない、あるいは聞いてもらえないといった「コミュニケーションのすれ違い」も、不公平感の要因になります。

例えば、家庭の事情で土日は勤務が難しい職員がいたとしても、周囲にその理由が知られていなければ「なんであの人だけ土日休みなの?」といった不満が出てしまいます。

また、希望休の取り方や申請期限について明確な説明がないままだと、「ちゃんと出しても無視される」「自分の希望は反映されない」といった不信感が生まれがちです。

円滑な情報共有がされていない職場では、小さな誤解が不公平感、職員同士の不信感につながってしまう可能性があります。

パワハラや人間関係の影響

もっと深刻なケースとして、特定の職員に対して意図的に不利なシフトを組むといった“ハラスメント的な運用”が行われている場合もあります。

いわゆるパワハラやいじめの一環として、連続勤務や夜勤ばかりのシフトを押し付けるといった事例が報告されることもあります。

また、シフト作成を担当する人間と親しいかどうか、意見を言える関係かどうかといった「職場内の力関係」も影響します。

「あの人は何を言っても通るけど、自分の希望は全く聞いてもらえない」と感じると、公平性への不信が加速し、職場全体の雰囲気が悪化する原因にもなります。

不公平なシフトがもたらす影響

休日に疲労が取れず、動けない介護職

シフトの偏りや希望が通らない不満は、個人の感情にとどまらず、介護現場全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、不公平なシフトがどのような問題を引き起こすのか、職員と利用者の両面から見ていきましょう。

体力的・精神的負担の増加

「夜勤ばかり」

「連続勤務が多い」

「休みが取れない」

といった過酷なシフトは、介護職員の体力と精神を大きく消耗させます。

とくに介護の仕事は、利用者とのコミュニケーションや身体介助など、想像以上に体力と集中力を要する業務です。

その中で不規則な勤務が続けば、慢性的な疲労やストレスがたまり、心身の不調につながるリスクも高まります。

こうした状態が続くと、「また今月もきついシフトか…」と勤務表を見ただけで気が重くなり、仕事に対する意欲が失われていくことにもつながります。

職場の人間関係悪化

不公平なシフトは、職員同士の関係にも悪影響を及ぼします。

「あの人はいつも楽なシフト」「自分ばかり割を食っている」といった不満が積もると、疑念や嫉妬が生まれ、チームとしての連携が取りづらくなります。

とくに、同じユニットやフロア内で負担に差があると、「協力し合う雰囲気」が薄れ、業務中のちょっとしたやり取りにもトゲが出てしまうこともあります。

これが続くと、職場内にギスギスした空気が漂い、業務効率や職員のメンタルにも悪影響を及ぼします。

介護サービスの質が低下する

職員の疲労やモチベーションの低下は、そのまま介護サービスの質に跳ね返ります。

たとえば、注意力が散漫になることで転倒などの事故リスクが高まったり、利用者への対応が機械的・雑になったりといったケースも起こり得ます。

また、チームワークが崩れている現場では、情報共有や連携ミスが増えやすく、結果として利用者の安心や安全が損なわれる可能性もあります。

シフトの不公平は、見えづらいところで“利用者の生活そのもの”に影響を与えているのです。

離職や退職リスク

不公平なシフトが続くことにより、「この職場では長く働けない」と感じて転職や退職を考える職員も少なくありません。

介護業界はただでさえ離職率が高く、人材の流出は大きな問題です。

もし経験のある職員やリーダー格の人材がシフトへの不満から辞めてしまえば、現場の業務はさらに厳しくなり、悪循環に陥る可能性もあります。

「もう少し頑張ろう」と思っていた職員が、不満の積み重ねによって心が折れてしまう前に、組織として早期にシグナルを察知し、対策を講じることが求められます。

介護現場での不公平なシフトへの対処法

不公平なシフトへの対処法

「シフトが不公平だ」と感じたとき、その思いを飲み込んで我慢し続けることは、心身にとっても職場環境にとっても健全ではありません。

自分を守り、状況を少しでも良くするためには、早めに行動を起こすことが大切です。

ここでは、現場で働く介護職が実践しやすい対処法を4つご紹介します。

不公平なシフトの状況を記録・整理する

まずは、自分のシフト状況を客観的に把握することが第一歩です。

 「今月の夜勤は何回か」

「連勤は何日続いているか」

「希望休は何日通らなかったか」

など、事実を具体的にメモや表にまとめましょう。

主観的な不満だけでは、上司やシフト作成者に相談しても「思い込みでは?」と受け取られてしまうこともあります。

しかし、数字や日付といった具体的な記録があれば、客観的な根拠として説得力が増します。後に相談や交渉を行う際の“証拠”としても有効です。

上司やシフト作成者に相談する

記録を元に、信頼できる上司やシフト作成担当者に率直に相談してみましょう。

 「このような勤務状況が続いていて、少し負担に感じている」と伝えるだけでも、相手に気づきを与えることができます。

大切なのは、「感情的に不満をぶつける」のではなく、「事実に基づき、改善をお願いする」という姿勢です。

また、相談のタイミングも業務が落ち着いている時間帯を選ぶなど、相手への配慮も意識すると良いでしょう。

場合によっては、「人手不足で調整が難しかった」「他にも不満を抱えている人がいた」といった背景が明らかになり、職場全体の見直しにつながる可能性もあります。

労働組合や相談窓口を活用する

「職場内で相談しても改善されなかった」「そもそも相談しづらい雰囲気がある」といった場合には、第三者機関に相談するという選択肢もあります。

例えば、事業所に労働組合がある場合は、シフトの偏りや休暇取得の不公平について相談できます。

ほかにも、介護職向けの労働相談窓口(労働基準監督署・各自治体の労働センター・民間NPOなど)を活用すれば、法的な観点からアドバイスをもらえるケースもあります。

「こんなこと相談していいのか」と思いがちですが、働く環境を守るために使える制度は遠慮なく使うべきです。

転職を視野に入れる

相談しても改善が見込めない、心身の限界が近いと感じた場合は、転職を検討するのも一つの選択です。

 介護業界では、シフトや働き方に配慮された施設も増えており、「夜勤なし」「連勤配慮あり」「希望休が通りやすい」などを掲げた求人も少なくありません。

無理に今の職場で耐え続けるよりも、自分に合った環境に移ることで、心身ともに健康を取り戻せることもあります。

「辞める=逃げ」ではなく、「よりよく働くための前向きな選択」と捉えることが大切です。

今の職場で働き続けたい場合には改善提案・相談する

介護リーダーに働き方を相談する介護職

「辞めるつもりはないけれど、今のままのシフトではつらい」

そんなふうに感じている介護職員の方も多いのではないでしょうか。

職場や人間関係に愛着があるからこそ、不満を抱えながらも我慢してしまう人は少なくありません。しかし、無理を重ねて心身をすり減らしてしまう前に、まずは今いる職場の中で変えられることに目を向けることが大切です。

提案・相談のポイントを整理してから伝える

まずは、勤務実態を冷静に整理しましょう。

感情的に伝えるのではなく、「どうすれば働きやすくなるか」を視点に入れることで、相手も前向きに受け止めやすくなります。

改善提案の具体例:

  • 夜勤の回数をもう少し均等に分けてほしい
  • 希望休が通る基準やルールを明確にしてほしい
  • 連勤を避けるような勤務バランスを検討してほしい
  • シフトの作成過程で職員の声を反映してほしい

提案のコツは「一方的な要求」ではなく、「業務改善の視点」を交えて伝えることです。
「働きやすくなれば、もっと業務に集中できます」といった前向きな伝え方が効果的です。

相談のタイミングと相手を工夫する

提案を聞いてもらうには、誰に、いつ、どう話すかも重要です。

話しやすい状況をつくる工夫:

  • 信頼できる上司・リーダーに個別で相談する
  • 忙しい時間帯を避け、落ち着いた時間に話す
  • 書面や簡単なメモにまとめて渡すことで話がスムーズに進む場合も

複数人で同じ意見を持っている場合は、共通の声として伝えると効果が高まります。
個人のわがままではなく、「現場全体の課題」として受け止めてもらえる可能性が高まります。

このように、提案は「伝え方」と「タイミング」がカギになります。

「辞めたいほどではないけれど、少しでも働きやすくしたい」と感じている方は、遠慮せずに声を上げてみることが、よりよい職場環境づくりへの第一歩となります。

より働きやすい介護施設を探したい場合は転職を検討する

シフトの不公平が続き、相談や提案をしても改善が見られない場合、「転職」も選択肢の一つです。無理をして現在の職場にとどまることで、心身の負担が限界を超えてしまってからでは遅い場合もあります。

働き方の改善=今の職場で変えることとは限らず、「環境そのものを変える」ことが最善の手段になることもあるのです。

働きやすい職場を見つけるためのチェックポイント

転職を考える際には、「シフトの組み方」や「勤務体制」に注目して職場選びをすることが重要です。

施設選びの視点:

  • 夜勤の回数やシフトの組み方に偏りがないか
  • 希望休制度が明文化されており、取得しやすいか
  • 勤務時間・休憩・残業などの労務管理が適正に行われているか
  • シフト作成に透明性があるか(職員の意見が反映されるか)
  • 離職率が低く、定着している職員が多いか

「夜勤なし」「連勤配慮あり」「希望休制度あり」など、シフトに関する条件を明示している求人を選ぶのがコツです。
面接や見学の場で、シフト体制について具体的に質問してみるのも有効です。

転職活動に不安がある場合は、介護職専門の転職支援を活用

「どんな職場がいいか分からない」「一人で転職活動するのが不安」といった場合は、介護業界に特化した転職エージェントの利用もおすすめです。

転職エージェントのメリット:

  • シフトや勤務条件など希望に合う求人をピックアップしてくれる
  • 職場の雰囲気や離職理由など、求人票だけでは分からない情報も得られる
  • 面接の日程調整や条件交渉のサポートをしてくれる

「働き方を変えたい」という前向きな気持ちに応えてくれるエージェントは多く存在します。
転職活動は、一人で抱え込まず、プロの力を借りて進めることでスムーズに進みやすくなります。

「辞める」という選択は、ネガティブな逃げではありません。

 より良い働き方・より健やかな生活を手に入れるための前向きな行動です。

 今の環境で限界を感じているなら、自分を大切にするためにも、新しい職場を探してみる勇気を持ってください。

まとめ

介護職の現場では、シフトの不公平さに悩む職員が少なくありません。

夜勤や連勤の偏り、希望休が通らないこと、ルールが曖昧なままのシフト作成など、勤務形態に対する不満は日常の業務負担に直結します。

そうした不公平が蓄積すれば、心身の疲労はもちろん、職場の人間関係や介護サービスの質にまで影響を及ぼすことがあります。

不公平なシフトに気づいたときには、まず事実を客観的に整理し、上司や作成者に冷静に相談することが第一歩となります。

それでも状況が改善されない場合には、外部の相談機関に頼る、あるいは転職を視野に入れることも現実的な選択です。

働き方は、職場環境に依存する部分も多く、誰かの決定によって自分だけが負担を強いられている状況は、本来あるべき姿ではありません。

一方で、今の職場に愛着がある、働き続けたいと感じる場合には、無理のない範囲で改善提案を行い、職場全体の働きやすさ向上に貢献することもできます。

自分自身の声が、職場環境を変えるきっかけとなることも少なくありません。

介護の仕事を長く続けるためには、無理をしすぎないこと、そして働き方に対する納得感を持つことが重要です。

今の職場で働き続けるか、それとも新たな環境に進むか、その判断はどちらも前向きな選択肢です。

自分にとっての「働きやすさ」とは何かを見つめ直し、納得できる働き方を見つけていきましょう。

-働き方