介護施設で働く際、職員同士のトラブルは決して珍しいものではありません。
人手不足や多忙な現場、異なる価値観や経験を持つスタッフが集まる環境では、ささいな行き違いが大きな問題に発展することもあります。
こうしたトラブルは、働く人のストレスや離職の原因となるだけでなく、利用者へのサービスの質にも影響を及ぼします。
この記事では、介護施設で起こりやすい職員同士のトラブルの背景や具体的な事例、効果的な対処法、そして安心して働ける職場選びのポイントまでを分かりやすく解説します。
これから介護職を目指す方や、現場で悩みを抱えている方のヒントになれば幸いです。
介護施設で職員同士のトラブルが起こる背景

介護施設では、多様な背景を持つ職員が共に働くため、意見の食い違いや価値観のズレが起こりやすい環境です。
さらに、慢性的な人手不足や業務の多忙さが、職員の精神的・身体的な負担を増加させ、ちょっとしたきっかけでトラブルへと発展することも少なくありません。
この章では、介護施設で職員同士のトラブルが発生しやすい主な要因について解説します。
多様な価値観・年代が集まる職場の特徴
介護現場では、年齢や経験年数、働く動機や価値観が異なる職員が混在しています。
例えば、定年後に再就職した60代のベテラン職員と、福祉系の学校を出て間もない20代の新人職員とでは、仕事への取り組み方や利用者への接し方にも違いが見られます。
その違いが良い相乗効果を生むこともありますが、考え方や仕事の進め方のズレが不満につながることもあります。
たとえば、新人が「この方法は非効率だ」と思っても、ベテランからすると「長年の経験で身につけたやり方を否定された」と感じることがあり、対立の原因になることもあります。
また、年齢が離れていることで話しかけづらさを感じるケースもあり、コミュニケーションが不足しやすくなる点も注意が必要です。
コミュニケーション不足と業務分担の不公平
忙しい介護施設では、業務中のコミュニケーションが最小限となってしまうことも多く、言葉足らずなやり取りが誤解を生むこともあります。
たとえば「さっきお願いした件は?」と聞かれても、「聞いていない」と言われれば、それだけで不信感が生まれてしまいます。
また、業務の分担が偏ってしまうと、「自分ばかりきつい仕事を押し付けられている」「あの人は毎回、負担の軽い業務ばかりしている」といった不公平感が募り、職員同士の不満が蓄積されていきます。
特に夜勤や入浴介助など身体的負担の大きい業務が特定の人に偏ると、本人のモチベーション低下、不満の蓄積にも直結し、職場全体の雰囲気を悪化させる原因にもなります。
公平な業務分担と、互いの状況を理解し合えるコミュニケーションの工夫が求められます。
ストレスや人手不足がもたらす影響
介護業界全体で人手不足が深刻化しており、多くの職場では定員ギリギリ、もしくは常に人員が足りない状態が続いています。
このような状況では、1人当たりの業務負担が大きくなり、職員の心と体に余裕がなくなっていきます。
疲れがたまった状態では、普段なら気にならない些細な言動にも敏感に反応してしまい、「言い方がきつかった」「無視された気がする」といった感情的なすれ違いが起こりやすくなります。
また、ストレスが溜まった状態では、思いやりや配慮の気持ちが薄れがちになり、つい攻撃的な言葉や態度を取ってしまうこともあるでしょう。
職員のメンタルヘルスを守ることは、トラブルを未然に防ぐためにも非常に重要な視点です。
十分な休息や、業務負担の分散、気軽に相談できる体制づくりが、安定した人間関係を維持する鍵になります。
介護職員間トラブルの主な事例と原因

介護職員同士のトラブルは、職場の雰囲気や業務効率に大きな影響を与えます。
現場では日常的な摩擦や誤解から深刻な対立に発展するケースも少なくありません。
この章では、介護施設で実際に起こりやすいトラブルの事例と、その背景にある原因について詳しく見ていきます。
いじめ・ハラスメント(パワハラ・セクハラ等)
介護現場でよく見られる深刻な問題のひとつが、いじめやハラスメントです。
代表的なのはパワハラ(パワーハラスメント)で、ベテラン職員が新人や後輩に対して威圧的な態度をとったり、失敗を過剰に叱責したりする行為です。
「報告したのに無視された」「ミスをみんなの前で責められた」といった事例もよく聞かれます。
また、セクシャルハラスメントやマタニティハラスメント(妊娠・出産を理由にした嫌がらせ)なども、女性職員が多い現場では特に注意が必要です。
意図がなくても、相手が不快に感じた時点でハラスメントとなる可能性があります。
こうした問題は、当事者だけでなく周囲の職員にも悪影響を与え、職場の信頼関係を大きく損なう原因となります。
新人・中堅・ベテラン間の摩擦
経験年数や立場の違いによって起こる摩擦も、介護施設では頻繁に見られます。
たとえば新人職員がマニュアルに沿って丁寧に対応していると、「もっと早くして」とベテランから急かされるケースがあります。
一方、中堅職員は上司と新人の間に挟まれ、板挟みのような立場で精神的に疲弊しやすいのが特徴です。
また、ベテラン職員の中には「昔ながらのやり方」を重視する傾向があり、新しい方法や改善提案に反発を示すこともあります。
それに対し若手職員は合理性や効率を重視する傾向が強いため、業務の進め方をめぐって衝突が起きることがあります。
それぞれが責任を持って業務にあたる姿勢は大切ですが、価値観の違いを受け入れる柔軟さがないと、協力関係が築けず、トラブルに発展することがあります。
業務連携・情報共有不足による誤解
介護業務は複数の職員が連携して行うことが多いため、情報共有の不足がトラブルの引き金になるケースも多くあります。
たとえば、申し送りが不十分で入居者の対応が二重になったり、処置の有無で食い違いが生じたりすると、責任の押し付け合いに発展する可能性があります。
また、「あの人に伝えたつもりだった」「確認したと思っていた」といった思い込みが、業務ミスやトラブルを招く原因になります。
特に夜勤明けやシフト交代時の情報共有は、疲労や時間の制約もあり、ミスが起きやすくなります。
こうした問題を防ぐには、記録の徹底やチームでの定期的な情報共有の場を設けることが効果的です。
口頭のやり取りに頼らず、業務連絡ノートやITツールの活用なども、有効な対策のひとつです。
介護職員同士のトラブルへの対処法と予防策

職員間のトラブルが発生した際、感情的に反応してしまうと、状況が悪化したり、関係がさらにこじれたりする可能性があります。
冷静に状況を見つめ直し、正しい手順で対応することが重要です。
ここでは、トラブルが発生したときの実践的な対処法と、未然に防ぐための予防策を具体的に解説します。
冷静にトラブルの原因を明らかにする
問題が発生したら、まずは事実を客観的に整理することから始めましょう。
トラブルの原因を明確にすることで、対応すべきポイントが見えてきます。
具体的な確認項目
- いつ、どこで、誰と、何が起きたか
- そのとき、自分と相手はどう行動したか
- なぜそれがトラブルと感じたのか(感情的理由ではなく、客観的理由
たとえば、「Aさんから何度も無視されている気がする」と感じた場合でも、実際には忙しさゆえのすれ違いだったということもあります。
このように、思い込みではなく事実ベースで状況を整理することで、必要以上に対立を深めるのを防げます。
日常のコミュニケーションで改善できないかを考える
介護現場での人間関係は、日々の積み重ねによって築かれます。
大きなトラブルになる前に、日常的なコミュニケーションで関係性を良好に保つことが大切です。
日常で意識したい行動例
- 朝のあいさつをしっかり交わす
- 小さなことでも「ありがとう」と伝える
- 困っている様子を見たら「大丈夫ですか?」と一声かける
- 業務後のちょっとした立ち話で相手を理解する
また、トラブルが発生した場合も、いきなり上司に報告するのではなく、まずは自分の言葉で相手に伝えてみるという選択もあります。
例:「さっきの言い方が少し気になったので、お互い気持ちよく働けるように話せたら嬉しいです」
このような伝え方ができれば、感情的な衝突を避けることができます。
トラブルの悩みを上司に相談する
個人間の話し合いでは解決が難しい場合や、心理的な負担が大きい場合は、早めに上司やリーダーに相談することが大切です。
相談する際は、感情的な訴えではなく、具体的な事実と影響を整理して伝えることがポイントです。
効果的な相談の手順
項目 | 内容のポイント |
① 事実を整理 | いつ・誰が・何をしたかを簡潔に伝える |
② 感情を伝える | 「悲しかった」「不安だった」など率直な気持ちも添える |
③ 要望を伝える | 「改善してほしい」「話し合いの場を持ってほしい」など目的を明確にする |
上司が間に入ることで、当事者同士では難しい調整がスムーズに進む場合もあります。
その際は「問題解決のための相談」であることを意識して伝えることが重要です。
相談窓口・第三者への相談活用法
施設内での相談が難しい、あるいは相談しても状況が改善しない、ハラスメントなどの深刻な問題の場合は、外部の相談機関を活用することも検討しましょう。
利用できる主な相談機関
相談機関名 | 主な対応内容 | 相談方法 |
労働局「総合労働相談コーナー」 | ハラスメント、労働条件全般 | 電話・来所 |
自治体の福祉相談窓口 | 職場の人間関係、福祉労働のトラブル | 窓口・Web相談フォーム |
介護事業者団体(例:全国介護事業者連盟) | ハラスメント対応、職場改善に関する助言 | メール・電話 |
これらの機関では、匿名での相談も可能な場合があり、気持ちの整理にもつながります。
「誰にも言えず抱え込んでいたけど、話せて楽になった」というケースも多くあります。
ハラスメント防止の組織的取り組み
トラブルを個人だけの問題として放置せず、施設全体で防止策を講じることが重要です。
ハラスメントなどの問題は個人の努力だけでは解決が難しいため、組織全体での取り組みが必要です。例えば、職場でのハラスメント防止には、以下のような組織的な対策が効果的です。
有効な取り組み例
- ハラスメント研修の定期実施
- 定期的な職員アンケートで雰囲気や悩みを把握
- 第三者機関と連携した相談窓口の設置
- 管理者層へのマネジメント教育
上記のような取り組みは、トラブルを未然に防ぎ、離職率の低下にも寄与します。
また、相談しやすい空気感があることで、「小さな問題のうちに解決できる」職場文化が育ちます。
新人職員が直面しやすい人間関係の問題

介護現場において、新人職員は業務を覚えることに加え、職場の人間関係にも早くなじむことが求められます。
しかし実際には、慣れない環境でのコミュニケーションや、先輩職員との距離感に悩むケースも少なくありません。
ここでは、新人が直面しやすい人間関係のトラブルと、その背景について解説します。
よくある新人の人間関係の悩み
以下のような悩みが、新人職員から多く挙げられます。
- 話しかけづらい雰囲気
→ 職員同士の輪に入りづらく、孤立感を覚える - 業務の指導が曖昧・厳しい
→ 先輩によって教え方が違い、何が正解かわからず混乱する - 無視や陰口などの態度
→ 「質問しても冷たい」「他の職員が裏で自分の話をしていた」など心理的な不安を感じる
このような状況が続くと、自信をなくしたり、出勤が憂うつになったりすることもあります。
特に介護業界は離職率が高く、「人間関係が理由で辞めたい」と感じる新人も少なくありません。
また、新人職員は「わからないこと」を質問しづらい雰囲気に悩むことが少なくありません。
「忙しそうで声をかけられない」「質問すると怒られそう」といった不安から、必要な情報を得られないまま業務を進めてしまうケースがあります。
特に介護現場では、利用者の命と安全に関わる業務が多いため、ミスへの不安や緊張感が強く、それがさらにコミュニケーションを難しくする要因となっています。
なぜ新人が人間関係で悩みやすいのか
新人が人間関係でつまずきやすいのには、以下のような背景があります。
● 職場に“暗黙のルール”が多い
介護現場では、マニュアルに書かれていないルールや流れが存在することが多くあります。
たとえば「この利用者さんにはこの声かけがいい」「このタイミングでコール対応しないと怒られる」など、経験で身につけるべき部分が多いため、最初のうちは戸惑いがちです。
それを周囲が丁寧にフォローできていないと、新人は「自分だけ分かっていない」と感じ、疎外感につながります。
● 教える側に余裕がない
現場は常に人手不足であり、先輩職員も業務に追われている状況が多く見られます。
そのため、新人に対して「丁寧に教える余裕がない」「ついきつい言い方をしてしまう」という場面が発生しやすくなります。
結果として、新人は委縮し、質問しづらい空気が生まれてしまいます。
● 新人自身が完璧を求めすぎる
新人側も「早く仕事を覚えなければ」「迷惑をかけたくない」と気負ってしまい、失敗を過剰に恐れる傾向があります。
そのプレッシャーからうまく話せず、関係がうまく築けなくなることも少なくありません。
必要以上に遠慮してしまい、孤立を深めてしまうケースもあります。
対策のポイント:新人と周囲の両方に必要な意識
視点 | 具体的に意識すべきこと |
新人側 | ・完璧を目指しすぎず、素直に質問する姿勢を大切にする・あいさつや笑顔など基本的なコミュニケーションを意識する ・メモを取る習慣をつけ、同じ質問を繰り返さないよう工夫する |
先輩・上司側 | ・新人の状況をこまめに気にかけ、声をかける・初期段階で「何でも聞いていい」と伝える文化をつくる |
新人職員が安心して働けるようにするためには、「人間関係の最初のつまずきを放置しない」姿勢が重要です。
施設全体で新人をサポートする仕組みづくりが、早期離職の防止にもつながります。
トラブルが解決しない場合の選択肢

介護施設での職員同士のトラブルは、対話や相談を通じて解決できることが理想ですが、残念ながら状況が改善しないケースもあります。
長期間にわたって問題が続き、心身の健康に影響が出始めたら、自分を守るための選択肢を検討する必要があります。
ここでは、トラブルが解決しない場合に考えられる選択肢として、施設内での異動や配置転換、そして転職について解説します。
自分の状況に合った判断ができるよう、それぞれのメリットやポイントを理解しましょう。
異動願い・配置転換の活用
同じ法人や施設内でも、部署やフロア、勤務シフトの変更によって人間関係の問題が解消されることがあります。異動や配置転換は、完全に環境を変えるほどの大きな決断ではないため、まずはこの選択肢を検討してみるとよいでしょう。
職場は同じでも、関わるメンバーや業務内容が変わるだけで、精神的なストレスが大きく軽減されることがあります。
異動を希望する際のポイント
- 人間関係の悩みを正直に伝える必要はない
→ 「業務の適性を見直したい」「新しい分野にも挑戦したい」など、前向きな理由で申し出るのが望ましい - 記録やメモがあると説得力が増す
→ トラブルが継続的である場合、簡単な記録でもあれば相談しやすくなる - 希望のタイミングは繁忙期を避ける
→ 人員調整が難しい時期より、余裕のあるタイミングのほうが受け入れられやすい
異動や配置換えは「逃げ」ではなく、自分を守るための適切な対応策のひとつです。
施設側としても、職員のメンタルヘルスや離職を防ぐため、柔軟に対応してくれるケースが増えています。
転職を視野に入れる
施設内での改善が難しい、あるいは組織全体に問題があると感じた場合は、転職も選択肢として前向きに検討すべき状況です。
特に、以下のような状況に当てはまる場合は、環境を変えることが自身の健康やキャリアにとっても有益です。
転職を検討すべきサイン
- 精神的に限界を感じている
- 信頼できる相談相手が職場にいない
- ハラスメントや暴言が改善されない
- 体調不良や不眠など健康面に影響が出ている
- 上司や経営層がトラブルを放置している
転職活動を始める前にすべきこと
- 退職のタイミングを見極める
→ 焦って辞めるのではなく、次の職場が決まってから退職するのが理想 - 自己分析を行い、次の職場に求める条件を整理する
→ 「人間関係がよい」「教育体制が整っている」「相談しやすい環境」など明確にしておく - 転職エージェントや口コミサイトを活用する
→ 内部の雰囲気や離職率など、自分では調べにくい情報を得るのに役立つ
転職は、介護の仕事自体を諦めることではありません。転職は不安も大きいですが、介護職は人材需要が高く、経験者であれば比較的転職先を見つけやすい状況を生かすべきでしょう。
より働きやすい職場で、長く安心してキャリアを築くための前向きな選択です。
介護職が安心して働くための職場選び

人間関係のトラブルに悩んだ経験がある方にとって、次の職場選びは非常に重要です。
給料や勤務地だけでなく、職場の雰囲気やサポート体制など、働く上での「安心感」が得られるかどうかが、長く続けるための鍵となります。
ここでは、安心して働ける職場を見極めるためのポイントを解説します。
見学・面接で確認すべきポイント
施設の雰囲気は、求人票やホームページの情報だけでは分かりません。
できるだけ見学や面接時に、次のような点を意識して観察することが大切です。
見学で確認したいチェックポイント
- 職員同士があいさつを交わしているか
- 見学者や面接者に対する対応が丁寧か
- 利用者と職員のやり取りが穏やかか
面接で質問したい項目
また、面接では、以下のような質問をすることで、職場環境についての情報を得ることができます。
- 職員の平均勤続年数はどのくらいですか
- 新人教育や研修制度はどのようになっていますか
- 職員間のコミュニケーションを大切にする取り組みはありますか
- 悩みや相談事がある場合、どのような対応をしていますか
- 介護記録や情報共有の方法が整っているか
- 残業や有休取得の実態について質問しても答えてくれるか
表面的な説明だけでなく、施設全体に流れる空気感や職員の表情なども、見落とさず確認しましょう。
職場の雰囲気や人間関係の見極め方
雰囲気の良し悪しは、短時間の見学でもある程度感じ取ることができます。
特に注目すべきポイントは以下の通りです。
- 常にピリピリした空気が漂っていないか
- 特定の職員が怒鳴ったり、無言で作業していないか
- 若手とベテランが自然に会話しているか
- 休憩室やバックヤードの雰囲気もチェック
また、面接官の表情や質問の仕方からも、組織の風通しの良さが見えてきます。
一方的に話すだけで、こちらの質問に答えにくそうな対応をされた場合は注意が必要です。
離職率が低い介護施設の特徴
安心して働ける職場には、いくつかの共通点があります。
中でも離職率の低さは、職場環境の安定性を示す大きな指標となります。
離職率が低い施設に見られる特徴
- 業務マニュアルや研修制度が整っている
- 定期的な1on1面談などで職員の声を拾っている
- 有給休暇や育休が取りやすい風土がある
- チームで動く意識が高く、助け合いが自然に行われている
- 上司やリーダーが現場の状況に関心を持っている
これらの要素は、求人情報や面接だけでは見えにくい部分もあるため、事前に調査することが大切です。
転職エージェントや口コミの活用法
介護職の転職活動では、転職エージェントや口コミサイトを活用することで、より多くの情報を得ることができます。これらのツールを効果的に使いこなすポイントを紹介します。
転職エージェントは、公開求人だけでなく非公開求人の情報も持っており、施設の内部事情にも詳しいことが多いです。エージェントを選ぶ際は、介護業界に特化したエージェントを選ぶと、より専門的なアドバイスが得られます。
エージェントとの面談では、「人間関係の良い職場を希望している」「ハラスメントのない環境で働きたい」など、具体的な希望を伝えることが大切です。また、複数のエージェントを利用することで、より多くの選択肢を得ることができます。
口コミサイトの活用では、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
- 極端に良い評価や悪い評価だけでなく、中立的な意見も参考にする
- 最新の口コミを重視する(施設の状況は変わることがあるため)
- 具体的なエピソードが書かれた口コミは信頼性が高い傾向がある
- 同じ施設について複数の口コミを比較して総合的に判断する
また、可能であれば施設の近くの飲食店や商店で働く人に話を聞いてみるのも一つの方法です。地域の評判や、実際に利用している家族の声などが聞けることもあります。
これらの情報収集を通じて、表面的な条件だけでなく、実際の職場環境や人間関係についての理解を深めることができます。時間をかけて慎重に選ぶことで、長く安心して働ける職場に出会える可能性が高まります。
介護職員同士のトラブルを防ぐために大切なこと

介護職員間のトラブルは、業務の効率だけでなく、職場全体の雰囲気や利用者へのサービスにも悪影響を及ぼします。
だからこそ、問題が起きてから対処するのではなく、日頃から良好な人間関係を築くための努力が重要です。
この章では、職員間のトラブルを未然に防ぐために現場で意識すべきポイントを紹介します。
報告・連絡・相談の習慣を徹底する
トラブルの多くは、些細な情報の行き違いから始まります。
そのため、報告・連絡・相談(いわゆる「報連相」)の徹底は、人間関係トラブルの予防に非常に効果的です。
報連相のポイント
- 報告:何か問題や変化があったときは、早めに共有する
- 連絡:業務の進捗や引き継ぎ事項を、必要な相手に正確に伝える
- 相談:自分だけで判断がつかないことは、上司や仲間に助けを求める
とくに夜勤やフロアの交代時には、書面や口頭での引き継ぎ内容をダブルチェックする習慣が効果的です。
こうした基本を徹底することで、誤解や疑念を防ぎ、信頼関係が築かれやすくなります。
相手を尊重する意識を持つ
忙しい介護現場では、つい業務が優先され、人間関係がおろそかになることもあります。
しかし、どんなに業務が円滑でも、信頼が失われれば職場はギスギスしてしまいます。
だからこそ「相手も同じように忙しい」「相手にも事情があるかもしれない」と思いやる姿勢が欠かせません。
尊重の気持ちを行動に表すには
- 名前を呼ぶ、あいさつを欠かさない
- 感謝の気持ちはできるだけ言葉にする
- 意見が違っても、まずは相手の話を最後まで聞く
- 注意や指摘をするときは、人格を否定しない
このような小さな配慮の積み重ねが、安心して働ける職場の空気をつくります。
感情をコントロールする力を養う
人間関係のトラブルの多くは、感情的な反応がきっかけとなります。
たとえば、忙しさの中で思わずきつい言い方をしてしまったり、他人の言葉に過敏に反応してしまうこともあります。
感情を抑えることは簡単ではありませんが、「いま自分はイライラしているな」と気づくだけでも状況は変わります。
アンガーマネジメント(怒りの感情をコントロールする技法)などを取り入れ、自分の感情に気づくトレーニングをするのも有効です。
ストレスマネジメントも重要です。介護職は感情労働であり、介護の仕事は身体的にも精神的にも負担が大きい仕事です。職員も自身のストレスに気づき、適切に対処する方法を知っておくことが大切です。
また、職場に「気軽に話せる相手」や「感情を吐き出せる場」があることも大切です。
感情を内側に溜め込まず、うまく発散することで、冷静に対応できる余裕が生まれます。
まとめ
介護施設での職員同士のトラブルは、誰にでも起こり得る問題です。
価値観や年齢、業務の進め方の違いから摩擦が生まれることは自然なことであり、避けきれない場面もあります。
しかし、問題が起きたときにどう対応するか、日頃からどのような関係づくりを心がけるかによって、職場の雰囲気や働きやすさは大きく変わります。
この記事では、介護現場で起こりやすい人間関係のトラブルとその背景、対処法、そして予防策について詳しく解説してきました。
特に新人職員は、環境になじむまでに時間がかかり、孤立感や不安を抱えやすいため、周囲の理解とサポートが欠かせません。
また、トラブルが解決しない場合は、異動や転職といった選択肢を前向きに捉えることも大切です。
無理をして体調や心の健康を崩してしまう前に、自分に合った環境を選び直すことは、長く介護の仕事を続けるための有効な手段です。
最終的に、安心して働ける職場を見つけるためには、「人間関係の良さ」や「相談しやすい風土」があるかを見極める力が求められます。
職員同士がお互いを尊重し、支え合える環境であれば、利用者にとってもより良い介護サービスの提供につながるはずです。