介護職として働く方の中で「この仕事、本当に続けられるのだろうか」と悩んでいる方は少なくありません。 実際に、令和5年度の介護労働実態調査によると、介護職の離職率は13.1%と過去最低を記録したものの、依然として多くの介護職員が転職を検討している現状があります。
あなたも介護現場で働いていると、悩むこともあるのではないでしょうか。
「人間関係がつらい」「給料が低くて将来が不安」「体力的にきつい」など、介護職特有の悩みを抱えながら働き続けることで、心身の不調につながってしまう可能性もあります。
しかし、感情的に退職を決めてしまうのは避けた方が良いでしょう。まずは自分の気持ちを整理し、本当に転職すべきタイミングなのかを冷静に判断することが大切です。
この記事では、介護職を辞めたいと感じる具体的な理由を紹介し、悩みを抱えたときの心の整理方法、転職を検討すべき適切なタイミング、そして介護経験を活かした新たなキャリアパスまでを詳しく解説します。
一度、立ち止まって今後の介護業界での働き方、キャリアを考える、そんなきっかけになれば嬉しいです。
介護職を辞めたい理由10

介護職として働く方々が転職を考える理由は何でしょうか。 令和5年度の介護労働実態調査では、実際に介護職を辞めた方の退職理由が明らかになっています。
周りで介護職を退職した人の理由を聞くと、ほとんどが以下のどれかに当てはまっている状況です。
ここでは、その調査結果を基に、介護職を辞めたい理由をランキング形式で詳しく解説します。
1:職場の人間関係に問題がある
退職理由の第1位は「職場の人間関係に問題があったため」で、34.3%の方が挙げています。 この数値は前年度比で6.8ポイント増加しており、依然として多くの介護職員が人間関係の悩みを抱えていることがわかります。
具体的には、上司からのパワハラや思いやりのない言動、同僚からの悪口や嫌がらせ、管理職のリーダーシップ不足などが原因として挙げられています。職場によっては派閥があって、入職してから愕然とした、といったケースもあります。
介護の現場では、利用者の命と向き合う責任の重さから、職員間の連携が特に重要となるため、人間関係の問題は仕事の質にも直結する深刻な課題です。
2:給料が低く将来に不安を感じる
第2位は「収入が少なかったため」で16.6%となっています。 また、「自分の将来の見込みが立たなかったため」も9.9%と上位に入っており、経済的な不安が転職の大きな要因となっています。
現状では介護報酬改定は3年ごとのため、物価上昇に介護業界が特に追いつけていません。それもあり、介護業界を辞める人は増えている状況です。
介護職の給与水準は他業種と比較して低い傾向にあり、特に若い世代では結婚や住宅購入、子育てなどのライフイベントを考えると、現在の収入では将来設計が難しいと感じる方が多いのが実情です。
3:身体的・精神的負担が大きい
「自分に向かない仕事だったため」(8.4%)や「病気・高齢のため」(6.9%)という理由からは、介護職の身体的・精神的負担の大きさが読み取れます。
介護業務では、利用者の移乗や入浴介助など身体的な負担が大きい作業が多く、また、利用者の生命に関わる責任の重さから精神的なストレスも蓄積しやすい環境にあります。 特に夜勤や不規則な勤務により、体調管理が困難になるケースも少なくありません。
年齢が上がるとともに、体力的な悩みを抱える介護職は増える傾向です。
4:職場の運営方針に不満がある
「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」も、26.3%と高い割合を示しています。
これは、介護の質を重視したい職員と、効率や収益を重視する経営陣との間で価値観の違いが生じるケースが多いことを示しています。 また、人員配置の不適切さや、職員の意見が経営に反映されない組織体制への不満も含まれています。
5:夜勤や不規則な勤務で生活リズムが崩れる
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームなどの施設では、24時間体制での介護が必要なため、夜勤や不規則な勤務シフトが避けられません。
この勤務形態により、家族との時間が取れない、社会的なつながりが希薄になる、体調管理が困難になるなどの問題が生じ、退職を考える要因となっています。
睡眠不足や体内時計の乱れから、慢性的な疲労感や体調不良を感じる方も多いのではないでしょうか。
6:仕事にやりがいを感じられない
介護職は本来、利用者の生活を支える意義深い仕事ですが、業務量の多さや時間的制約により、一人ひとりの利用者と十分に向き合えない現状があります。
このような状況が続くと、介護職として目指していた理想と現実のギャップに悩み、仕事へのやりがいを失ってしまう職員が出てきます。
また、利用者や家族から感謝されることが少なく、むしろクレームを受けることが多い職場では、モチベーションの維持も困難になってしまい、退職の原因となることがあります。
7:キャリアアップの道筋が見えない
介護業界では、資格取得によるキャリアアップの仕組みはありますが、実際の職場では昇進や昇格の機会が限られているケースが多くあります。介護事業所によってはポストが少ないのです。
また、管理職になるための研修体制が整っていない、長期的なキャリア形成の支援が不十分な職場では、将来への不安から転職を考える職員が増える傾向にあります。
8:利用者や家族との関係にストレスを感じる
利用者やその家族との関係性の構築は、介護職の重要な業務の一つですが、時として大きなストレスの原因となることもあります。
認知症による暴言や暴力、家族からの過度な要求や理不尽な苦情などに日常的に対応することで、精神的な負担が蓄積し、退職を考える職員もいます。
対人援助職としての使命感と、現実の困難さのギャップに悩む職員が多いのが実情です。
9:業務量が多すぎて休む時間がない
介護業界では慢性的な人手不足により、一人当たりの業務量が過多になりがちです。 特に、介護記録の作成、会議への参加、研修受講など、直接介護以外の業務も多く、残業が常態化している職場も少なくありません。
このような状況では、十分な休息が取れず、心身の疲労が蓄積して退職を考える要因となります。
10:職場の設備や環境が整っていない
働きやすい職場環境の整備は、職員の定着に重要な要素です。 しかし、古い設備のまま運営されている施設や、職員の休憩スペースが十分でない職場では、働く環境への不満が蓄積します。
また、介護ロボットやICT機器の導入が進んでいない職場では、業務効率化が図れず、職員の負担軽減につながらないことも退職理由の一つとなっています。
介護職を辞めたいと感じたときにするべき"心の整理"とは?

「介護職を辞めたい」と感じたとき、感情的に退職を決めてしまうのは後悔につながる可能性があります。 まずは冷静に自分の気持ちと状況を整理し、本当に転職が必要なのかを判断することが重要です。
働きながらだと心の整理が難しい場合、休日に考えたり、有給休暇を取って考えることも大切でしょう。
ここでは、心の整理を行うための具体的な方法をご紹介します。
介護職にやりがいを感じているか
最初に確認したいのは、介護職そのものにやりがいを感じているかどうかです。 利用者から「ありがとう」と言われたとき、利用者の笑顔を見たとき、介護技術が向上したと実感できたときなど、仕事にやりがいを感じる瞬間があるかを思い返してみましょう。
もしやりがいを感じている場合は、問題は職場環境にある可能性が高く、同じ介護職でも環境を変えることで解決できるかもしれません。 一方、介護職自体にやりがいを感じられない場合は、他の職種への転職を検討する必要があるでしょう。
感情と本音を紙に書き出して整理
心の整理を行う最も効果的な方法は、自分の感情と本音を紙に書き出すことです。
以下の項目について、具体的に書き出してみましょう。
辞めたい理由を明確にする
- どんなときに辞めたいと感じるか
- 職場で起きている具体的な問題は何か
- その問題はいつから始まったか
- 問題の原因は何だと思うか
現在の仕事の良い面を振り返る
- 介護職として成長できたこと
- 利用者や家族から感謝された経験
- 同僚との良い関係性
- 身につけたスキルや知識
将来への希望を整理する
- 今後どのような働き方をしたいか
- 介護職として目指したい姿
- プライベートで実現したいこと
- 経済的な目標
書き出すことで、感情的になっている部分と客観的な事実を分けて考えることができ、より冷静な判断が可能になります。
家族や信頼できる人に相談
一人で悩み続けると視野が狭くなり、適切な判断ができなくなる場合があります。 家族や信頼できる友人、先輩などに相談することで、新しい視点から問題を見ることができます。
相談する際のポイント
- 感情的にならず、事実を整理して話す
- 相手の意見を素直に聞く
- 複数の人に相談して、様々な意見を聞く
- 最終的な判断は自分で行う
また、介護職の先輩や同僚に相談する場合は、同じような経験をした人の体験談を聞くことで、具体的な解決策を得られる可能性があります。
客観的に見て仕事を辞めるべきかどうか考える
最後に、感情を一旦置いて、客観的な視点で転職の必要性を判断しましょう。 以下の基準を参考にして、現在の状況を評価してみてください。
職場環境の改善可能性
- 問題となっている状況は改善される見込みがあるか
- 自分の努力や工夫で解決できる問題か
- 職場全体の問題で個人では対処できない問題か
心身への影響
- 仕事が原因で体調不良が続いているか
- 睡眠や食事に影響が出ているか
- 家族や友人との関係に支障が出ているか
キャリアの将来性
- 現在の職場でスキルアップできる環境があるか
- 将来的な昇進や昇格の可能性があるか
- 他の職場でより良い条件で働ける可能性があるか
経済的な影響
- 転職によって収入が改善される見込みがあるか
- 転職活動にかかる時間や費用を考慮できるか
- 失業期間中の生活費は確保できるか
色々なことを考えて、決めることが大切です。どの選択肢が自分にとってポジティブになるかを考えましょう。
辞めたい、と考え始めると転職一択になる可能性がありますが、急いで決断せず、十分に時間をかけて検討することが大切です。
辞めたい…悩みを抱えて働き続けるデメリット

「辞めたい」という気持ちを抱えながらも、経済的な理由や責任感から働き続けている介護職の方は多くいます。 しかし、深刻な悩みを抱えたまま無理に働き続けることは、様々なデメリットを引き起こす可能性があります。
ここでは、介護の仕事を我慢し続けて働くことのリスクについて詳しく解説します。
心身の不調が生じる可能性
介護職は身体的・精神的負担が大きい職業として知られており、ストレスを抱えたまま働き続けることで、深刻な健康被害につながる恐れがあります。
身体的な影響 長時間の労働や不規則な勤務、人間関係のストレスなどが続くと、以下のような身体的症状が現れる可能性があります。
- 慢性的な疲労感や倦怠感
- 頭痛や肩こり、腰痛の悪化
- 睡眠障害(不眠症や早朝覚醒)
- 食欲不振や胃腸の不調
- 免疫力の低下による感染症の発症
特に介護職では、利用者の移乗や入浴介助などの身体的負担が大きい作業が多く、精神的ストレスが加わることで、これらの症状がより深刻化する傾向にあります。
精神的な影響: 心理的ストレスが蓄積すると、以下のような精神的症状が現れることがあります。
- うつ状態や不安感の増大
- イライラや怒りっぽさ
- 集中力や判断力の低下
- 自信喪失や無力感
- 人間関係の回避
調査によると、介護職の約3割が精神的な負担を感じており、うつ病などの精神疾患で労災申請を行うケースも少なくありません。 また、介護職は「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になりやすい職種としても知られています。
燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスク:介護職のような感情労働を伴う職業では、燃え尽き症候群に陥るリスクが高まります。 燃え尽き症候群は、以下の3つの要素で構成されています。
- 情緒的消耗感:仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗した状態
- 脱人格化:利用者に対して冷淡で思いやりのない態度を取るようになる
- 個人的達成感の低下:仕事に対する有能感や達成感が失われる
この状態が続くと、仕事の質が低下し、利用者へのケアにも悪影響を及ぼす可能性があります。
介護職自体が嫌になる
深刻な悩みを抱えたまま働き続けることで、介護職そのものに対して否定的な感情を抱くようになる恐れがあります。
やりがいの喪失:本来、介護職は利用者の生活を支え、笑顔を見ることができる意義深い仕事です。 しかし、職場環境の問題や人間関係のストレスにより、この本来の意義を見失ってしまうことがあります。
- 利用者との関わりに喜びを感じられなくなる
- 介護技術の向上に対する意欲が失われる
- 同僚や上司との関係に疲れ果てる
- 介護職としての誇りや使命感が薄れる
スキルの停滞:精神的な余裕がなくなると、新しいことを学ぶ意欲や成長への関心が低下します。 その結果、介護技術の向上が止まり、キャリアの発展に支障をきたす可能性があります。
また、ネガティブな感情が強くなると、利用者や家族との関係性構築にも影響が出て、介護職として必要なコミュニケーション能力の向上も阻害されます。
業界全体への不信:特定の職場での負の経験が、介護業界全体に対する不信や失望につながることがあります。 「介護の仕事はどこも同じような問題を抱えている」という固定観念を持ってしまうと、他の職場で働く機会を逃してしまう可能性があります。
実際には、職場によって環境や働きやすさは大きく異なりますが、一つの職場での辛い経験が、介護職全体に対する見方を歪めてしまうことがあります。
早期の対処が重要:これらのデメリットを回避するためには、心身の不調を感じた段階で適切な対処を行うことが重要です。
- 信頼できる人への相談
- 専門機関でのカウンセリング
- 職場環境の改善提案
- 必要に応じた転職活動
- 一時的な休職の検討
自分の健康と将来のキャリアを守るためには、早めの行動が大切です。介護職としての経験や技術は貴重な財産であり、活躍の場を他に探すことも、場合によっては考える必要があるでしょう。
今の職場を辞めて転職を考えるタイミング

介護職を続けるか転職するかの判断は、人生に大きな影響を与える重要な決断です。 感情的に決めてしまうと後悔することもあるため、客観的な判断基準を持つことが大切です。 ここでは、転職を真剣に検討すべき具体的なタイミングについて解説します。
心身にストレスを感じるようになった時
仕事が原因で心身に不調をきたしている場合は、転職を検討すべき明確なサインです。 健康は何よりも大切な財産であり、仕事によって健康を害することは避けるべきことです。
身体的な不調が続いている場合
- 慢性的な疲労感や倦怠感が抜けない
- 頭痛、肩こり、腰痛などの症状が悪化している
- 睡眠障害(不眠、早朝覚醒、悪夢など)がある
- 食欲不振や胃腸の不調が続いている
- 免疫力の低下により風邪を引きやすくなった
精神的な不調が見られる場合
- 朝起きるのが辛く、出勤するのが苦痛
- 仕事のことを考えると気分が沈む
- イライラしやすく、感情のコントロールが困難
- 集中力や判断力が明らかに低下している
- 家族や友人との関係に影響が出ている
これらの症状が2週間以上続いている場合は、早急に対処する必要があります。 まずは医療機関を受診し、専門家の意見を聞くことが重要です。
仕事内容に違和感や罪悪感を感じる時
介護職として働く中で、自分の価値観や理想と現実のギャップが大きすぎる場合、転職を考えるタイミングかもしれません。
利用者への対応に疑問を感じる時
- 人手不足により十分なケアができない状況が続いている
- 利用者の尊厳を軽視するような対応を強要される
- 安全性に問題があるとわかっていても改善されない
- 利用者の意思よりも効率を優先する方針に従わされる
職場の方針に納得できない時
- 介護の質よりも利益を優先する経営方針
- 法令違反や不適切な運営が改善されない
- 職員の意見や提案が全く聞き入れられない
- 利用者の安全を脅かすような人員配置
このような状況では、介護職としての使命感や価値観との間に深刻な葛藤が生じます。 長期間このような環境で働き続けると、介護職に対する情熱を失ってしまう可能性があります。
職場の人間関係が改善される見込みがない時
人間関係の問題は、介護職を辞めたい理由の第1位(34.3%)となっており、多くの職員が悩んでいる深刻な問題です。
改善の見込みがない人間関係の特徴
- 上司からのパワハラやいじめが常態化している
- 同僚からの嫌がらせや孤立が続いている
- 管理職が問題を把握していても対処しない
- 職場全体が閉鎖的で新しい人を受け入れない雰囲気
- 派閥争いや対立が激化している
改善努力をした後の判断 転職を決める前に、以下のような改善努力を行うことが重要です。
- 直属の上司への相談
- 人事部門や経営陣への報告
- 第三者機関(労働基準監督署など)への相談
- 職場内での話し合いの場の設定
これらの努力をしても状況が改善されない場合は、転職を検討すべきタイミングです。
キャリアアップの機会が見込めない時
将来への不安から転職を考える場合、現在の職場でキャリアアップの可能性があるかどうかを慎重に検討する必要があります。
キャリアアップが困難な職場の特徴
- 昇進・昇格の基準が不明確または不公平
- 管理職のポストが限られており、長期間空きがない
- 研修制度が充実していない
- 資格取得の支援体制がない
- 長年勤務しても給与が上がらない
年齢を考慮した転職タイミング
- 20代:経験を積みながら様々な職場を経験する時期
- 30代:キャリアの方向性を決める重要な時期
- 40代以上:専門性や管理能力を活かせる職場への転職
特に30代後半以降は、転職の難易度が上がる傾向があるため、キャリアアップを目指す転職は早めに検討することが重要です。
給与や労働条件に不満がある時
経済的な理由による転職は、慎重に判断する必要があります。 しかし、生活に支障をきたすレベルの低賃金や、労働基準法に違反するような労働条件の場合は、転職を検討すべきです。
転職を考えるべき労働条件
- 最低賃金を下回る給与
- 残業代が支払われない
- 有給休暇が取得できない
- 労働時間が法定時間を大幅に超過している
- 社会保険に加入していない
給与面での判断基準
- 同業他社と比較して明らかに低い給与水準
- 昇給制度がない、または昇給額が極めて少ない
- 各種手当(夜勤手当、資格手当など)が支給されない
- 賞与が支給されない、または極めて少ない
組織変更や人員増強があった時
逆に、職場環境が改善される兆しが見えた場合は、転職を一度見直すことも必要です。
改善の兆候
- 新しい管理職の着任
- 人員の大幅な増員
- 給与制度の改善
- 研修制度の充実
- 職場環境の改善計画の発表
これらの変化が見られる場合は、少し様子を見てから転職を判断することも一つの選択肢です。
転職は人生の重要な決断です。 感情的にならず、これらの判断基準を参考に、自分にとって最適なタイミングを見極めることが大切です。
介護経験を活かせる転職・キャリアパス

介護職での経験は、多くの分野で高く評価される貴重なスキルです。 転職を検討する際は、これまでの経験を活かせる職種や働き方を選ぶことで、より良い条件での転職が可能になります。 ここでは、介護経験を活かせる具体的な転職先とキャリアパスについて詳しく解説します。
介護業界内で働き方を変える
同じ介護業界でも、施設形態や職種を変えることで、労働環境や待遇を大幅に改善できる場合があります。 まずは介護業界内での転職から検討してみましょう。
施設形態別の働きやすさ(特養・老健・デイサービス等)
特別養護老人ホーム(特養)
- 特徴:要介護度の高い入居者が多く、終の棲家としての役割
- 働きやすさのポイント:
- 介護技術や対応力が身につく
- 夜勤手当により収入アップが期待できる
- 入居者との長期的な関係を築ける
- 向いている人:しっかりとした介護技術を身につけたい方、夜勤を含む勤務が可能な方
介護老人保健施設(老健)
- 特徴:在宅復帰を目指すリハビリテーション施設
- 働きやすさのポイント:
- 医療と介護の両方の知識が身につく
- 看護師や理学療法士との連携により専門性を高められる
- 入居者の改善を実感できる
- 向いている人:医療的な知識を深めたい方、チームワークを重視する方
デイサービス
- 特徴:在宅の高齢者が日中を過ごす通所型サービス
- 働きやすさのポイント:
- 夜勤がなく規則正しい生活ができる
- レクリエーション企画など創意工夫を活かせる
- 家族との時間を大切にできる
- 向いている人:夜勤を避けたい方、コミュニケーション能力を活かしたい方
有料老人ホーム
- 特徴:民間企業が運営する高齢者向け居住施設
- 働きやすさのポイント:
- 施設によって設備や環境が充実している
- 接遇やサービス向上のスキルが身につく
- 向いている人:サービス業的な要素を重視する方、キャリアアップを目指す方
訪問介護
- 特徴:利用者の自宅を訪問してサービスを提供
- 働きやすさのポイント:
- 利用者と1対1で向き合える
- 移動時間を自分のペースで調整できる
- 時間給が比較的高い
- 向いている人:独立性を重視する方、運転に支障がない方
医療・福祉周辺職種への転職
介護経験を活かして、医療や福祉の周辺職種に転職することも可能です。
看護助手
- 仕事内容:看護師のサポート業務、患者の身の回りの世話
- 活かせる経験:身体介護技術、コミュニケーション能力
- 平均年収:約250万円〜350万円
- メリット:医療知識が身につく、看護師を目指すステップになる
福祉用具専門相談員
- 仕事内容:福祉用具の選定・調整・メンテナンス
- 活かせる経験:利用者の身体状況把握、福祉用具の使用経験
- 平均年収:約300万円〜400万円
- メリット:専門性が高く、やりがいを感じられる
介護タクシー運転手
- 仕事内容:介護が必要な方の移送サービス
- 活かせる経験:移乗技術、高齢者とのコミュニケーション
- 平均年収:約250万円〜400万円
- メリット:独立開業も可能、自分のペースで働ける
生活相談員
- 仕事内容:利用者や家族の相談対応、サービス計画の作成
- 活かせる経験:利用者対応、家族との連携経験
- 平均年収:約350万円〜450万円
- メリット:相談業務に特化、社会福祉士資格取得でさらなるキャリアアップ
他業界で評価される介護スキル
介護職で培ったスキルは、他業界でも高く評価されます。
コミュニケーション能力
- 活かせる職種:営業職、接客業、コールセンター
- 評価ポイント:相手の立場に立って考える力、傾聴力、問題解決能力
忍耐力・精神的タフネス
- 活かせる職種:管理職、教育関係、カウンセラー
- 評価ポイント:ストレス耐性、継続力、責任感
チームワーク
- 活かせる職種:一般企業の事務職、製造業、サービス業
- 評価ポイント:連携能力、協調性、リーダーシップ
具体的な転職先例
- 営業職:介護経験者の人間性が評価される
- 保育士:子育て経験と介護経験の両方を活かせる
- 医療事務:医療・福祉分野の知識を活かせる
- 人事・総務:人との関わりの経験を活かせる
転職エージェント・求人サイトの選び方と活用法
効果的な転職活動を行うためには、適切な転職サービスを選ぶことが重要です。
介護業界専門の転職エージェント
- メリット:業界に精通したアドバイザーによる的確なサポート
- おすすめポイント:非公開求人の紹介、面接対策、給与交渉
- 主要サービス:きらケア、マイナビ介護職、カイゴワーカー
総合転職エージェント
- メリット:幅広い業界の求人を紹介してもらえる
- おすすめポイント:異業種転職のサポート、キャリアカウンセリング
- 主要サービス:リクルートエージェント、doda、マイナビエージェント
求人サイトの活用法
- 情報収集:相場観を把握し、希望条件を明確化
- 応募管理:複数の求人に同時応募し、効率的に活動
- スカウト機能:経歴を登録し、企業からのアプローチを待つ
転職活動を成功させるポイント
- 自己分析を徹底する:強み・弱み、価値観、キャリアビジョンを明確化
- 複数の転職サービスを併用する:機会を最大化し、比較検討する
- 面接対策を怠らない:介護経験をどう活かすかを具体的に説明
- 給与交渉は慎重に:市場価値を把握し、根拠を持って交渉
- 退職時期を計画的に:円満退職を心がけ、引き継ぎを確実に行う
介護職での経験は、決して無駄になることはありません。 適切な転職活動を行うことで、より良い労働環境と待遇を得ることができるでしょう。 自分の価値を正しく理解し、それを活かせる職場を見つけることが成功への鍵となります。
まとめ
介護職で「辞めたい」と感じることは珍しくなく、令和5年度の調査でも約3人に1人が人間関係を理由に退職している、という結果が示されています。
大切なのは感情に任せず、まずは辞めたい理由を紙に書き出し、自分にとって本当に必要な行動を冷静に見極めることです。
職場環境に問題があるのか、介護職自体に向いていないのかを整理することで、適切な対処が可能になります。
ただし、心身に不調をきたしていたり、職場改善が見込めない場合には転職を検討するタイミングだといえるでしょう。
介護職の経験やスキルは他の介護施設や医療・福祉の周辺職種、さらには異業種でも活かせます。
仕事を健康を害してまで続ける必要はありません。健康で長く、やりがいをもって働くことがとても大切です。
もし転職を考えるのでしたら、自分にあった職場探しができるように、しっかりと情報収集を行ってみてください。職場見学はとても良い機会になります。
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